幼い頃、テレビの画面越しに見た真っ赤なスーパーカー。
雑誌のグラビアページを切り抜いて、下敷きに挟んでいた日々。
名前を聞いただけで胸が高鳴る——あの頃の僕のヒーローは、フェラーリだった。
「フェラーリ365GT4BB」
ベルリネッタ・ボクサー。その名前の響きだけで、ワクワクした少年時代。
憧れというのは不思議なもので、手に入らなくても、ずっと心の中にある。いや、むしろ手に入らないからこそ、特別なのかもしれない。
机の上でスーパーカー消しゴムをボールペンで飛ばして遊んだ記憶!
毎週楽しみにしていたスーパーカークイズ(TV番組)
※司会は笑点でお馴染みの山田隆夫さんでした!
そんな思い出を、よみがえらせてくれた出来事でした。
時は流れ、会社員として日々を過ごす今。
新年度を迎え、少し変化があった。
「今度入ってくる先輩、ちょっと癖ある人らしいよ」
そんな前評判を耳にしながら、新しく着任した4つ上の先輩が、なんと私の隣の席に。
「どんな人なんだろう…」と少し警戒しつつも、実際に話してみると…あれ?案外話しやすい。
意外と笑顔も多いし、普通の人だな、なんて思っていたある日——。
ふと目に入った、先輩のPC!
・・・その壁紙には・・・
「うわっ…フェラーリ365GT4BBじゃないですか⁉」
思わず声が出た。そう、あのベルリネッタ・ボクサー。
誰よりも速そうで、誰よりも美しかった、あのスーパーカーが目の前にいた。
まさか、あの車の名前を口にする日が再び来るとは思わなかった。
先輩も目を丸くして、「お、これ知ってるの?なかなか通だね」と嬉しそうに笑った。
そこからは、まるで時間が巻き戻ったかのように、スーパーカートークで盛り上がった。
ポルシェ930ターボ、ランボルギーニ・カウンタックLP400/LP500・・・の話まで飛び出して、仕事を忘れる勢いだった。
あの頃の僕と、今の僕が、ふっと繋がった瞬間。
そして、隣の先輩の“壁紙”という小さなきっかけから、新しい関係が生まれた。
残念ながら、フェラーリにはまだ乗れていないけれど、
憧れが誰かとの会話の扉を開いてくれるなんて、ちょっと素敵な体験でした。
スーパーカーは、やっぱり人生の「エンジン音」だ。
胸の奥でずっと鳴ってる、小さくて、でも確かな音。
亡き兄と遊んだ音。

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